@ 遠山 修、「フォトニクス結晶ファイバ」第31光波センシング技術研究会 (Proc. of 31st Meeting on Lightwave Sensing Technology)、LST 31-14、pp.89-96, 2003年6月6日
A フォトニック結晶ファイバ DIAGUIDE○RPCF、三菱電線株式会社製品カタログ、No.6-184 (2003.01)


構造


図1.カタログAより引用のファイバ断面

上記断面を図2のようなモデルで計算した。



図2.計算で用いたホーリーファイバの断面図

図2で、dはホールの直径、Λはホール間距離、Δはコア部分の比屈折率差、Raはコア半径である。



フィールド分布

文献@より、図3の引用がある。

図3.文献@に記されているホーリーファイバの近視野像の波長依存性

詳細な構造は不明であるが、記述のあるd/Λ=0.45より、Λ=2.1μm,d=0.945μmとして2種類の波長で計算した結果を図4(a)および(b)に記す。



図4 計算の結果得られたホーリーファイバの近視野像の波長依存性

図3と4を比較すると、波長が長いときにはコアから遠い範囲にフィールドが広がっているのに対して波長が短い場合には閉じ込めが強く、コア第一近傍ホールによって形成される正六角形の形を反映したビーム形状となっていることがわかる。


実効屈折率の波長依存性

図5にカタログに引用されている実効屈折率(Neff)とΛ/λの関係を記す。



図5.カタログAより引用の実効屈折率特性(赤線)

規格化周波数Veffはホーリーファイバでは定義そのものが明確ではないので、ここでは計算の結果容易に得られる実効屈折率を評価した。図6がその結果である。



図6.計算の結果得られた実効屈折率特性

図6は2種類の屈折率モデルでの結果を示してある。赤は波長に依存しなく1.45で一定のクラッドであり、黒は純粋なシリカを仮定したときのセルマイヤーの波長依存モデルである。図5の結果は赤の波長依存なしに対応し、実物は屈折率の波長依存があり、Aのカタログ値は計算値の可能性が高い。

図6を得る仮定で、種々の波長に対する計算を実行した。この中で、比較的長波の(a)λ=3.5μmと比較的短波の(b)λ=0.5μmに対するフィールド分布を図7に示す。

図7.長波および短波でのフィールド分布


曲げ特性

文献@では10φから3φのホーリーファイバでは曲げによる損失は観測されなかったと記されている。Fiber Designerを想定される構造に適用した。同時に比較のために、T. Sorensen et al., “Macro-bending loss properties of photonic crystal fiber,” Electron. Lett., vol. 37, pp. 287-289, March 2001.(文献Bという)の比較を行った結果を図8に記す。


図8.曲げ特性の計算結果

上図で、赤色は@に対応し、青と緑はBに対応する。赤色の場合、曲げ半径依存は少なかった。このことは文献@の結果ともよく一致する。また、よく知られているように短波でも曲げ特性が劣化する。このことは青、緑の特性に表れている。また、その原因として文献@では短波側ではコアとクラッドの屈折率差が小さくなると記されている。

文献Bにも記されているが波長依存の曲げ損失の最小値はホールピッチΛに依存しておおよそ、Λ/2で最小値となるガイドラインがある。厳密性には議論の余地は残るが、図8からそのガイドラインはおおよそサポートされることがわかる。図8に示したようにホール径やピッチを制御することで使用する波長領域で極めて曲げに強いファイバを実現することができ、その設計にFiber Designerが有効であることが理解できる。