回路解析によるラティス フィルタ特性のシミュレーション

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回路解析はAPSSの特長の一つであることを既に記した。ここでは、ラティス フィルタを取り上げて、具体的に回路解析の方法について詳細に記す。回路解析を行なうためには下位の階層である「デバイスの階層」でのSパラメータの計算結果を事前に準備しておかなければならない。ラティス フィルタを構成するキーデバイスであるカップラのデバイス解析のSパラメータ解析を同時に参照されたい。

本説明は、文献(K. Yamada et al., Optics Lett., vol. 28, pp.1663-1664, Sept. 2003) に記されている8段のラティス フィルタ特性のシミュレーションについて記す。
APSS起動後、File→New Project→Circuitを選択すると図1のウィザードが開始される。



図1.ラティス フィルタ解析のための回路プロジェクト作成ウイザード


図1で回路プロジェクト名を定義する。ここでは、C_LFilter(赤四角)とする。Description欄はメモとして用いることができる。プロジェクト名を入力した後、Next(赤丸)をクリックする。



図2.回路を構成するデバイスプロジェクトの選択


図2の画面では解析しようとする回路に含まれているデバイスとターミナルを定義する。この例でのラティス フィルタは8段のカップラからなるので、デバイス解析を行なったカップラプロジェクトを選択し(マウスで選択され黒くなっている)、矢印(赤丸)を8回クリックする。クリックする度に、右側のウインドウにデバイスが追加される。図2では8個のデバイスが追加された状態である。また、ターミナルは入力2つ、出力2つで合計4個であるので、Number of terminalsを4(青四角)とセットする。回路のサイズは後ほど変更が可能なのでここではデフォルトのままとする。以上の設定が終わったら、Finish(青丸)をクリックしてウィザードを終了する。



図3.回路解析のためのデバイスとターミナルが用意された段階


図2でFinishをクリックしてウイザードが終了すると図3の画面となる。
図3ではとりあえず、回路を構成する部品を画面に置いただけの段階である。User Definedタブ(赤丸)をクリックして、ユーザ定義を行なう。その様子を図4に記す。



図4.ユーザ定義


ユーザ定義の変数を用いて、4つのターミナルと8つのカップラを配置する。



図5.第一ターミナルの仮配置


左上に第一のターミナル(赤丸)を仮に配置した様子を図5に記す。残りのターミナルを仮配置し、カップラは最終的な場所に配置する。第一のカプラは(Z-Min,Y-Min) = (5,2) [単位μm]、第二のカプラは(Z-Min,Y-Min) = (15,2)として、図6では第五のカプラ(Z-Min,Y-Min) = (45,2)を配置している様子を示す。



図6.第五カップラの配置


4つのターミナルの仮配置と8つのカップラの最終配置を行ない、全ての回路要素を記述できる範囲で表示したものが図7である。



図7.回路プロジェクト作成途中の表示(カップラを配置した段階)


図7ではカップラにターミナルを接続し、カップラ間の接続も行なう。まず、第一カップラに第一ターミナルを接続する。このとき、第一カップラの位置は固定として、それに接続するように第一ターミナルを移動させることにする。



図8.第一ターミナルと第一カップラの接続過程(1)


接続するには接続するもの同士の2つの部品を選択しなければならない。ここでは、まず、第一ターミナルを選択する。マウスで図7の赤丸か赤四角をクリックする。すると、図7や8に示されているようにその部品が選択されたことがわかる印がつく。その状態で、マウスを右クリックすると、図8に示すようなウインドウが現れる。このウインドウはTerminal 1(赤四角)からSet Connection[接続](赤四角)をしていることを示している。Set Connectionを選択すると、マウスが指のシンボルとなり、それで第一カップラまでドラッグ アンド ドロップする。その結果、図9に示す、黒い線が第一カップラまで引かれる(赤丸)。ここで、この黒い線の開始点は気にせず、最終点が第一カップラとなることに注意されたい。なぜなら、接続元はすでに明確に設定されており、接続先を定義する行為であるからである。



図9.第一ターミナルと第一カップラの接続過程(2)


そうすると、図10のウインドウが開く。



図10.第一ターミナルと第一カップラの接続過程(3)


図10では2つの部品、第一ターミナル(青四角)と第一カップラ(赤四角)の接続を示している。第一ターミナルのシンボル(青丸)をクリックすると、図11が開く。


図11.第一ターミナルのシンボルレイアウト


図11では、第一ターミナルには2つの端子があり、その色から、その2つともまだ接続されていないことを示している。図9から今接続しようとしているのは第一ターミナルのPort 2を第一カップラと接続しようとしているので、図11でPort 2(青丸)をクリックする。すると、図12の第一ターミナルの選択端子にPort 2が設定される(青点線丸)。同様に、第一カップラのシンボル(赤四角)をクリックして、シンボルレイアウト(赤点線の四角)を開く。ここで、Port 1(赤丸)を選択すると、中央画面の赤点線丸のテキストに選択ポートが登録される。



図12.第一ターミナルと第一カップラの接続過程(4)


次に、接続方法は2つある。図12よりも図10が見易いのでこちらをご覧いただきたい。左側のメニューはコネクタを使っての接続、右側のメニューは直接の接続である。図12の接続では直接接続を選択する(茶色四角)。選択されると、そのボタンが押し込まれている状態となる。また、今回の直接接続では、第一カップラの位置を固定して、第一ターミナルを移動して接続するので、茶色丸の接続を選択する。これらの設定が終わるとOKをクリックする。

同様にして、第一カップラと第二カップラを接続する様子を図13に記す。



図13.第一カップラと第二カップラの接続


図13では第一カップラのPort 2(青丸)と第二カップラのPort 1(赤丸)を直線コネクタ(赤四角)で接続する選択を示してある。第一カップラのPort 1は既に黄色表示され、接続済み(先の図12で接続した)を示している。接続記述を終え、OKをクリックすると図14が開く。



図14.コネクタの解法設定


今回の計算では精度を得るために全てのコネクタは数値解析(赤丸)とした。同様に8段の直線接続を終え、図15はS字(円弧)コネクタ接続である。このような曲がり導波路はCBPM(シリンドリカルBPM)で数値解析し、離散化に伴う誤差の混入を極力抑制してある。図16に参考までにCBPMの計算制御パネルを示す。



図15.S字コネクタでの接続



図16.S字コネクタをCBPM解析する際の制御パネル


図15で残りのコネクタやターミナルを接続して回路を完成させる。完成した状態を図17に記す。



図17.全ての部品を接続して完成した回路


さて、計算を実行するにはRun Simulation(赤丸)をクリックする。すると、図18が出現するので、Y偏波(赤四角)を選択して、Run(赤丸)をクリックする。



図18.回路解析の解法設定



図19.保存確認画面


実際の計算に際しては、図19の保存確認画面でOKと返事を戻す。
各デバイスはSパラメータを読み出して計算し、コネクタは数値解析を行ない、全体の特性を計算する。計算途中にはプログレッシブ バーが表示され(図20)全体の計算進捗を知ることができる。



図20.プログレッシブ バー表示



図21.計算が正常に終了したときのメッセージ画面


図21のメッセージ画面で計算が正常に終了したことを知ることができる。OKをクリックすると、図22となる、View Simulation Results(赤丸)がEnableとなる。



図21.正常に回路解析が終了したときの画面


図21でView Simulation Resultsをクリックすると図22の結果が得られる。



図22.ラティス フィルタ特性の計算結果(TEモード)


上記の回路解析ではカップラのみを基本デバイスとしたのに対して、半円のコネクタも基本デバイスとしてラティス フィルタプロジェクトを作成することができる。その構成例を図23に記す。基本デバイス点数は増加するが半円のコネクタ特性の計算を7度も繰り返すことが無いので、改善することができ、全体として計算時間の短縮を図ることができる。



図23.半円コネクタも基本デバイスとしたときの回路構成