BPMとFDTD法の混在シミュレーション

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ビーム伝搬法(BPM)は一方向のシミュレーションである。従って、反射がある領域の解析にはBPMを適用することはできない。


図1.反射を含む領域のシミュレーション


図1は3つの領域からなる伝搬解析デバイスの模式図である。このうち「領域2」が反射領域とする。このときは、領域1をBPMで解析(前進解析
赤矢印)、領域2は反射領域で領域1の結果を初期条件としてFDTD法で解析する。領域2の右の境界値を初期条件として領域3のBPM解析(前進解析赤矢印)を行なう。領域2の左の境界値を初期条件として領域1のBPM解析(後退解析青矢印)を行なう。何度かこの繰り返し計算を行なう。このようにして領域2の反射が領域1と領域3に及ぼす効果をシミュレーションできる。この方法では、領域2のみをFDTD法とすることができ、デバイス全体をFDTD法で解く場合よりも効率的にシミュレーションできる利点がある。

APSSでは「あらかじめ定義されている構造」のライブラリがある(ユーザマニュアル16章参照)。この中から、デバイス端面(facet)に反射が戻り結合して悪影響を及ぼすことを抑制するために、図2に示すように斜めに端面をカットし、無反射コーティングをすることをシミュレーションする例がある。図2の領域1〜3は図1と対応する。ここでは、この例について記す。



図2.導波路端面


図2のような伝搬解析をするためには、前提となる導波路(領域1の断面)が必要である。今回は、簡単のために、InP系を前提として、リッジ幅2μm、リッジ深さ2μmで、ガイド層がλ=1.3μmからなるInGaAsP層0.5μmのハイメサ導波路(図3)を用いる。なお、導波路のモード解析については「InGaN/GaNレーザのモード計算」または「リーキーモード計算」を参照されたい。



図3.InP/InGaAsPリッジ導波路


図3を用いて導波路プロジェクトを作成する要領は「伝搬解析」で記した要領と基本的には同じである。デバイスプロジェクト名D_TiltedFacetなどと定義して、図3の導波路を選択する。




図4.あらかじめ定義されたデバイスの選択画面


図4に示すように、あらかじめ定義されたデバイス選択では “Facet”を選択し、Next(赤丸)をクリックしてウイザードを進める。



図5.ファセット情報選択画面


図5では、多層膜の層数を入力する(赤四角)。この例では、2層とする。入力後、Next(赤丸)をクリックする。図6のデバイスエディタ画面がオープンする。



図6.デバイス エディタ画面


図6ではGeometryタブ(赤丸)が選択されている状態なので、この状態で各寸法を入力する(赤四角領域)。この段階で変数の定義が良くわからないときには、青丸をクリックすると図7となる。



図7.デバイス変数定義画面


図7で再度、青丸をクリックすると図6に戻る。この寸法入力の段階で、F1とF2の長さが、図2の領域2として記す反射領域を定義する。この反射領域は計算結果として領域の左右で滑らかなフィールド分布になることが好ましい。安全サイドで十分に広い反射領域を定義してしまうと、計算精度は保証されるが計算時間が犠牲になる。反対に、余りに狭い反射領域では計算精度が犠牲になってしまう。寸法の定義が終了すると、図6のMaterialsタブ(青四角)に切り替え、領域の屈折率を定義する。全ての入力が終了すると、図6または7でFinish(茶色丸)をクリックしてウイザードを終了する(図8)。なお、寸法や屈折率の値の修正はウイザードが終わった後でも可能である。



図8.ウイザードが終了したときの画面


図8では、Run Simulation(赤丸)をクリックする。図9が開く。



図9.デバイス解析設定画面(一般設定)


図9のデバイス解析設定画面はGeneral Information(一般設定)タブ[赤四角]である。ここでは、偏波としてXとYをセミベクトル解析するので、X/Y(赤丸)を選択する。また、この導波路には7つのモードが存在することが表示されている。今回はその全てを含めるとして、計算するモード数を7と設定する(青四角)。設定が終わったら、Solver Selection(解法選択)タブ(青丸)を選択すると図10となる。




図10.デバイス解析設定画面(解法選択その1)


図10では出力としてはSパラメータとフィールドがある。このうち、今回はフィールド計算を行なう(赤丸)。計算する波長はプルダウンメニューから1.55μmに設定する。その結果、図11となる。



図11.デバイス解析設定画面(解法選択その1)


図11でAdvanced Setting(赤丸)を選択すると、図12が開く。



図12.BPMとFDTD法の両者を設定する画面


図12で左上は通常のBPMで、これらのパラメータに関する説明が必要であれば、「伝搬解析」、「広角BPM」を参照されたい。Bi-Directional Propagation ParametersではBPMを最大で何往復させ、相対的な値をどこまで反映させるかを指示する。FDTDでは、往復回数(伝搬距離で示す場合もある)と表示ステップ、収束判定を入力する。また、解析領域の上下(Y軸)ではPML境界条件を設定する。全ての設定が終われば、Mesh Setting(赤丸)をクリックする。



図13.Z方向メッシュ設定画面


図13はメッシュ設定の一例である。FDTD領域ではデバイス内部での波長の1/10以下のメッシュが要求され、この条件を満足しないときには計算を続けていいかの承認が求められる。Y方向もタブを切り替えて同様にメッシュを配置する。メッシュ操作が終われば、図13でCloseを選択し、図12に戻り、ここでもCloseを選択すると図11に戻る。この画面で、Runをクリックして計算を行なう。



図14.計算が終了したときの画面


計算が終了すると図14に示したように、View Simulation Results(赤丸)が有効になっているので、このアイコンをクリックする。すると、図15および16の結果を得る。これらの結果から、BPMで計算した領域とFDTD法で計算した領域が十分に滑らかに繋がっていることがわかる。

このように、解析手法BPMとFDTD法を使い分けることで精度を保ち効率よくシミュレーションすることができる。



図15.X偏波でのフィールド分布



図16.Y偏波での計算結果